札幌での単身赴任を始めてから、密かな楽しみになったことがある。
それは月に1~2回程度のタイミングで旭川の家に戻る、帰省の日。
愛する家族に会えることはもちろん嬉しいけど、さすがに夜遅くに仕事終わりから自分で運転しての車移動は体力的につらくなることが多いので、公共交通機関で帰るようになった。JR、もしくは高速バスを利用するが、そうなると旭川の街中で降りることになるので、さんろくにちょっとした寄り道ができるわけだ。
空腹時はガッツリ食べてもいいけど、そんなにお腹が空いていないときや、家に帰ったらあとは寝るだけというような遅い時間の場合、BARがちょうど良いなと気づいた。
お店によってはチャームでそこそこの軽食が出てくるので、最近食が細い自分にはそれで十分なことが大半だし、何よりそれをアテに美味しいお酒が飲める。これが毎週続けているとなると非経済的だが(あと健康面にもどうなんだろう?)、月一回くらいの頻度であれば(贅沢には変わりないけど)趣味の範囲というか許容範囲といえるのではないか? などと自分に言い訳をして、この日もBARのドアを開けるのだった。
お店の雰囲気
さんろく街、まさに3条6丁目の交差点。といっても5丁目側なのでやや人通りが少なくなるところ。店名の“M”を象る青白いネオンが目印となる「カクテルバーM」さん。BARのドアを開けるときのドキドキワクワク感は、これが非日常の世界への扉を開くようで毎回気分が高揚する。
建物の中に入るとまず、目の前には絵が飾られた壁。右手に地下へと誘う階段。降りて視界に入ってくるのは、バックバーにずらっとボトルが並ぶ圧巻の光景。カウンターには希少なジャパニーズウイスキーも。店内はカウンター席のみで、10人も入れば満席という広さだが、それがかえってウイスキーに囲まれているようで、酒好きにはたまらない空間だ。
そしてこちらのマスターがまた絵に描いたような”ザ・バーテンダー”で、その洗練された接客や所作のすべてがいちいち格好良い。実はもう何回かお邪魔させてもらっているお店だが、旭川へ帰ってくるたびにこちらへ寄ることが本当に楽しみになっている。
色々とお酒を嗜む
この日いただいたのは、まずはアードベッグ三種の飲み比べ。
DRUM、WEE BEASTIE、TEN が並べられる。もうこの見た目だけで酔える。
日頃から家でもブルックラディなどのアイラウイスキー、というかピート臭くて癖のあるウイスキーを好んで飲むが、アードベッグを飲み比べる機会はあまりないので、こういう試みを出来るのもBARが好きな理由の一つだ。お気に入りを探すための試飲のような使い方とでもいうか。
高いウイスキーをボトルで買って飲んだはいいものの、味が自分の好みに合わなかった場合は、その酒を飲みきるまで悲しみと後悔がつきまとうことになる。最近円安の影響などもあって輸入ウイスキーはお高いしね...。
しかし、この飲み比べは勉強になった。
TENはスタンダードなのでいつものピート・ヨード臭がたまらない、ザ・アードベッグ。
WEE BEASTIEは、中を焦がした樽で熟成されたとあって、そのキャラメルのような甘い香りがまたおもしろい。ただ、自分的にはいまひとつパンチが足りないかな。
DRUMは限定品として発売されたレアものだが、その価格の高騰っぷりにも飲んで納得。ラム酒の空き樽で追加熟成されたというもので、香りはスモーキーなピート臭の中にも南国の果物のようなフルーティーなものが漂い、味はスパイシーなチョコレート、バニラっぽさもある。複雑な味だけど、これがまためちゃくちゃ美味しい。
そしてこの日のチャームはパスタ。味も申し分ないほど美味しいけど、この絶妙な量が小腹が空いているときには嬉しい。
マスターとのお酒談義も楽しい時間。アードベッグに関する色々な蘊蓄を教えてもらう。
二杯目は、オリジナルカクテルの ロサ・ブロチェ
幸せな時間はあっという間に過ぎてしまう。少々飲み足りなかったが、酔ってフラフラと退店するのはとても格好が悪いので、ここらで退散。何種類か飲んできたが、こちらのお店はとにかくオリジナルカクテルが絶品なので、全メニュー制覇したい。よし、また次の帰省時も来よう。
店舗情報
営業時間 18:00~2:00
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