単身赴任で旭川から札幌に来た日のこと。朝から引っ越しの荷ほどきやらなんやらをしていたが、実際引っ越してみると「そういえばあれも要るな」の連続で買い物などにも何回か出たりしていると、あっという間にお昼になった。
お腹が空いたので何か食べようと考えたときに、コンビニ弁当では味気ない、せっかく一人だし札幌に来たんだし、単身生活初日を飾るに相応しいようなお店で外食しよう、と決めた。
決めたが、高級店とか有名店とかに行きたかったわけではない。ここでいう”相応しい”とは、「新しい世界へ飛び込んでいく自分」に、という意味なので、むしろ自分が全く予想できないようなお店へ、新しい世界の扉を開きに行きたいと思ったのだ。
そして車を走らせると、すぐにそんなお店との出会いがあった。通りがかりに目に入ったこちら「信ちゃんママ」さん。
店構えが面白すぎて、もう気になって気になって仕方がない。
いかにも飲み屋街という雰囲気の雑居ビルの二階、「ごはん大盛り無料」というのぼりに、「ランチ営業中」というあまり綺麗とはいえない(失礼)字の垂れ幕。まるでそこだけ異空間かのような佇まい。
どうする?スマホで下調べしてから行こうか?入ってからやっぱりやめておきますが通用するのか?
しかし逡巡は数秒だった。
僕は思ったのだ。”ここで臆して入れないようでは、この先札幌ではやっていけない”、と...
お店の雰囲気
ビルの前の一階、3台分ほどの駐車場がちょうど1台空いていたのも何かの運命だろうと、思い切ってそこへ車を滑り込ませた。
二階へと続く階段を昇るが、その段数に比例して心拍数も上がるようだった。
そして廊下を曲がり、店入口の前に来る。昼間なのに明るく照明がついて客を迎えてくれるこの看板だが、一見さんにこの如何にもな店の造りは、やはりハードルが高いように感じてしまう。さらに、店の中から賑やかな話声が聞こえてきて、常連さんだけで盛り上がっているような中に入ってしまったら居心地が悪くなるのでは、と、ここでドアを開けるのにまた少しの勇気を振り絞る必要があった。
と、以上が去年の話で、結論から言うとママさんも他のお客さんもめちゃくちゃ良い人ばかりで温かく迎えてくださって、とても居心地の良いお店でございました。
ご飯も美味しかったので次の日も、つまり二日連続でランチにお邪魔して、「あら!また来てくれたの!」といった感じで、なんとなく札幌での初めての”通えるお店”が出来たような嬉しい気持になったのを、昨日のことのように覚えている。
お店の中は厨房がほぼ半分を占めており、カウンターが6席と、二人掛けの卓が1つという、まんま元スナックでしたという感じのレイアウトだが、ここがいつもお客さんが絶えることなく賑わっている。
曜日によって混みあう時間がバラバラだ、とはママの言だが、平日のお昼時はだいたいお客さんが次から次へとやって来て、多いように感じる。土曜は不思議とお昼前後が忙しい時が多いとか。
後から知ったがテレビやラジオや雑誌でも何度か取り上げられているという有名なお店で、壁には数々のタレントのサインが。
メニューは手書きの表から選ぶわけだが、単品のものもあれば、書いてあるように二品ずつ選べるようなものもあるというシステムだ。どれも美味しいので、お腹が空いているときほど何を食べようか迷ってしまう...
アジフライとザンギのセット
そしてこのボリュームである。選んのは750円コースから、二品はアジフライとザンギ。アジフライはメニューには載っていないが、確か最初に頼んだものが切らしていたとかで替わりにこれになった。まぁ、信ちゃんママではこういうところもご愛敬。それよりこのボリュームだ。
何度も来てわかってはいるが、そしてわかっているからお腹を十分空かせては来るのだが、それでもいざ前にすると怯んでしまう、このボリュームだ。これで750円である。
しかも、定食メニューには漏れなく小鉢三品盛りと
日替わりのお味噌汁が付いてくる
しかも食後にはドリンクとデザートまでだ。もう一度書くが、これで750円だ。
この容器が可愛くて大好き。デザートも手作りで日替わり。ママさんの優しさが込められているようでいつも楽しみにして美味しくいただいている。
よく甘いものは別腹というが、信ちゃんママでも毎回腹十二分目くらいまで食べたのにデザートは不思議と入るので、どうやら本当のようです。ここに証言します。
ちなみに、100追加でご飯が”漫画盛り”にできる。日本昔話とかに出てくる(この表現って、若い人には通じないよな...)お茶碗に山盛りこんもりの例のアレだ。話の種にと僕も一度挑戦したが、返り討ちに遭ってボッコボコにされて身の程を知ったので、もう挑むことはないだろう。
ただでさえ特盛がデフォルトのランチなので残してしまうこともあるが、そんな時はお持ち帰り用の容器をいただいてテイクアウトとなる。自分で頼んでおいて食べ物を残すとは、ママさんに大変申し訳ない気持ちになるのだが、お腹いっぱい食べてほしいという思いと、そこまで無理して食べなくてもいいんだよ、というママさんの優しい気持ちが感じられるサービス、その心遣いがまた嬉しい。
忙しくて朝も食べられない時や、お昼を食べ逃した時なんかにお邪魔することが多いけど、そんな時にも温かく心穏やかな気持ちになれる、本当に素敵なお店です。
店舗情報
営業時間 10:00~15:00
定休日 日曜
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